余白

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読後メモ: 『コーチングのプロが教える 「ほめる」技術』

いつもの読後メモです。

今回読んだのは鈴木義幸著の「コーチングのプロが教える 「ほめる」技術」。

感想

この本はTHE GUILDのこばかなさんがおすすめしてたのがきっかけで読んだ。

技術的な指導やアドバイスをすることが多いなかで、コーチングという手法に関心があって読んでみた。

この本はタイトルのとおり「ほめる技術」にフォーカスしており、コーチングそのものというよりはその基礎となるアクノレッジメントの与え方を学ぶことができた。 「エンジニアリング組織論への招待」で言うところの「セルフマスタリー」を推進させてあげられるのがアクノレッジメントだと理解した。

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また、「THE CULTURE CODE」で登場する「帰属のシグナル」も、アクノレッジメントそのものだと感じた。 自分がチームの仲間として認められている、その安心感が挑戦に対する恐怖に打ち勝つ力や、妥協しない責任感を与えてくれる。

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安心したいのです、みんな。そして、安心したいという究極の欲求を満たしてくれた人に対して、人は絶大な信頼を寄せます。その人のリクエストには応えてあげたい、そう思うのです。なぜならその人の期待に応えれば、またあの安心感が手に入るかもしれないのですから。うずくような不安をその瞬間は味わうことなくすむわけですから。

つまり「心理的安全性」と呼ばれるものに通じていくそのスタート地点がアクノレッジメントであると、個人的には理解できた。

文章としても易しく、読みやすいボリュームと語り口だったので、チーム作りについて考える人にはぜひ読んでほしいおすすめの一冊だ。

印象深かったフレーズ

コーチングでは、質問を投げかけ、その質問に相手が答えるプロセスの中で、自然に相手が自分自身をある行為に向けて説得し動いていくのをサポートします。これを「自己説得」を引き起こすといいます。「自己説得」した行動は、「他己説得」された行動、つまり「ああしなさい、こうしなさい」と、他人からいわれて説得された行動よりも現実化する可能性が高いといわれています。

コーチングは自己説得を促す、つまりセルフマスタリーへの到達をサポートする。自律的な成長を促すのが重要。

ほめるというのは、ただ「すごい!」「すばらしい!」と美辞麗句を投げかけることではない、と。相手が心の底で、他人から聞きたいと思っている言葉を伝えて初めて、「ほめる」という行為は完結するのです。...(中略)... ほめることは技術です。何気なく人がほめられるかというと、そんなことはありません。相手をよく見て、相手が日々どんなことを思っているのかを洞察して、どんな言葉を投げかけられたいのかを熟慮して、初めて「ほめ言葉」は発せられるべきものなのです。

この本で解説する「ほめる技術」はこのポイントを解き明かすもの。どのような人物にどのようなほめ言葉を与えるべきかという方法論を紹介している。

私の知る限り、任せるのがうまい上司は、常日頃から部下に何を任せられるのかを一生懸命探しています。このレベルにいるのだからこれなら任せられるというものを何気ない観察の中で模索しているものです。このことで失敗しても責任は自分が取れる、もし失敗してもそれは部下の成長にとって大いに役立つだろうというものを探しています。

ここを読んで、「任せる技術」というのも存在するのだろうなと思った。積極的に任せられることを探し、ふさわしい部下に任せるというのは問題の分解能力と人を見る目が問われるはず。

アドバイスする時には相手に選択権を与えたいものです。「僕はこう思うけれども、君はどう思う?」と。別にそれに対してノーといっても構わない、その権利が君にはある、ということを明示してアドバイスをしたいものです。なぜなら選択権を与えるということはアクノレッジメントだからです。

「こうしたほうがいいから従ってほしい」というのは近道であるかもしれないが、コーチングという面でみればアクノレッジメントが不足しており、セルフマスタリーを支援することができていない。魚ではなく釣り方を与えるためには、たとえ短期的には遠回りでも自律性を重視したアドバイスが必要そうだと感じた。

次に読む本

OKRについての本を読んでいる途中です。もうすぐ読み終わる。

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

DOMのXSSを防ぐTrusted TypesとAngularのセキュリティ機構

Notionに書きました。

https://www.notion.so/lacolaco/DOM-XSS-Trusted-Types-Angular-Security-Context-8e9535e4effb445c96a54eb68c56dc47

ちなみに余談ですが、Notionの公開ページはどこかから参照されるまではクローラが来ないので、SEOが強めの場所からリンクすることで初めてサーチエンジンに引っかかるようになるのです。

読後メモ「THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法」

いつもの読後メモです。

今回読んだのはダニエル・コイル著の「THE CULTURE CODE」の日本語訳版。

THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法

THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法

この本は「チームの文化」というそこにあるのは確かなのに実体がつかめないダークマターのようなものに焦点を当てる。

実在の成功しているチーム、失敗しているチームへのインタビューや調査、そして多くの心理学的、社会学的実験のデータから、成功するチームのつくり方を明らかにしていく。全体を通して非常にエビデンス重視になっている。

感想

ここ最近で読んだ本の中で一番面白かった。

これからチームを作る人、チームを任された人、あるいは自分のチームが十分に成功していないと感じる人には、この本をぜひ読んでもらいたい。 チームを成功させるためにやるべきこと、やってはいけないこと、その基本がこの本には多くのエピソードやエビデンスと共に語られている。 エピソードが多いため登場する人名も多いが、全体を通して読みやすく翻訳されている。

よくGoogleNetflixのような一流企業のチームは素晴らしい文化を持っていると語られる。 この本を読むと、そうした文化は先天性のDNAのようなものではなく、スキルによって勝ち取り、育み、支えられているものだとわかる。 それは優れたリーダーが扇動するだけで出来上がるものでもない。日々の積み重ねで価値観を醸成していかなければならない。

この本では「心理的安全性」という言葉は使われないが、この本の中で「成功しているチーム」として挙げられるチームは例外なく心理的安全性が高い。 心理的安全性を高める方法に悩んでいる人にとっても、良いガイドになるだろう。

成功するチームには文化がある。その文化を作るスキルの磨き方を教えてくれる本だった。

印象深かったフレーズ

強いチームの文化を醸成するためのカギは、高度なスキルを持つ優秀なメンバーを集めることにはない。迅速な意思決定と実行でもない。そもそも「強いリーダー」は必要ない。個性的でエキセントリックな天才も必要ない。野心的で挑戦的なビジョンは不要。最先端のテクノロジーも無用。決め手は日常の仕事での、ちょっとしたさりげない行動──それはしばしば当人も意識していない──にある。小さな行動の積み重ねが大きな違いを生み出す。  強いチームのエンジンに火をつけるのはいたって常識的な「普通の人」である。

多くのエピソードが紹介されるが、キーマンとなるのは特別な才能を持ったリーダーではなく、人当たりのよい常識人であることが多い。そういう人柄こそがチームをうまく機能させる。

チームの文化が大切だということは誰でも知っている。しかし、そのしくみとなると、きちんと理解している人はほとんどいない。... しくみがよくわからないのは、もしかしたら「文化」というものを誤解しているからかもしれない。私たちは、文化はDNAのようなものだと考えている。  強固なチームの文化というと、たとえばグーグルやディズニー、ネイビーシールズなどが思い浮かぶだろう。彼らには固有の文化がある。あまりに独自の文化なので、彼らにしかないDNAから生まれたとしか思えない。  つまり、文化は運命のようなものであり、努力でどうにかなるものではない。強固な文化を持つチームもあれば、持たないチームもある。運命とはそういうものだ。  しかし、この本はその考え方に賛同しない。私はこの4年の間に、世界でもっとも成功している8つのチームを実際に訪ね、分析を重ねてきた。たとえば、軍の特殊部隊、都市部の貧困地区にある公立学校、プロのバスケットボールチーム、映画スタジオ、コメディ集団、宝石窃盗団などだ※2。  分析の結果、それらのチームには共通のスキルがあることがわかった。

文化とはスキルによって作られるものである。というこの本の主題。

たいていの人は、「言葉は言葉でしかない」とは考えない。むしろ大切なのは言葉であり、チームのパフォーマンスはメンバーの「言葉の知性」と比例し、複雑なアイデアを的確に伝える能力が高いほど、チームのパフォーマンスも上がると考えている。  しかし、その考え方は間違っている。言葉はノイズだ。  チームのパフォーマンスを決めるのは、「ここは安全な場所だ。そして私たちはつながっている」というメッセージを伝えるしぐさや態度なのだ。

多くの場合、人を動かすのは言葉ではなく仲間の振る舞いだ。という集団的知性の話。

人間の脳が「安心」を合理的に理解するのであれば、シグナルは一度で十分なはずだ。しかし私たちの脳はそのように進化していない。脳のいちばんの仕事はむしろ心配することであり、とりつかれたように「危険」のシグナルを探している。だからこそ人類は生き残ることができた。  この危険を執拗に恐れる態度は、脳の奥深くにある扁桃体という部位から生まれている。扁桃体は原始的な脳の部位で、つねに周りの環境を監視して危険を探している。

繰り返し帰属のシグナルを送り続けなければならない理由について。「ここにいても安全か」という心配は本能であり、どこかに危険なサインがないかをいつも探している。

帰属のシグナルに、人格や規律は関係ない。大切なのは、メンバーが安心できる環境をつくることだ。 「私たちはつながっているか?」 「私たちは未来を共有しているか?」 「ここは安全な場所か?」  という問いに対して、「イエス」という答えを与えられる環境がカギになる。

「メンバーが安心できる環境」とはつまり心理的安全性の高いチームであるということだ。その環境をどう作るかという話が細かく書かれている。

いいチームをつくるうえでいちばん大切なのは、優秀なメンバーを集めることでも、経験豊かなメンバーを集めることでもない。それは、メンバーの机の位置だ。 「目で見えるといったごく単純なことが、とても大きな意味を持つ」とアレンは言う。「他のメンバーの姿が見える、他のメンバーが働いている場所が見えるといったことが、彼らの存在を思い出させるきっかけになってくれる。それが大きな力を持つようになる。

すべては 「私たちはつながっているか?」 「私たちは未来を共有しているか?」 「ここは安全な場所か?」 を確認できるということに通じる。

成功しているチームは、メンバー選びの段階からすでに成功している。 ... 成功しているチームは、腐ったリンゴに対してとても厳しい。それに加えて、腐ったリンゴを鋭く見抜くこともできる。おそらく後者のほうが、より重要な資質だろう。 「オールブラックス」の愛称で知られるラグビーニュージーランド代表チームは、世界史上もっとも成功したスポーツチームの1つに数えられる。そんな彼らのモットーは、「愚か者は去れ」だ。シンプルな言葉だが、だからこそ大きな効果がある。

この本を読むとわかるが、チームに悪影響を与えるメンバーというのは明確に存在する。非協力的なメンバーを「腐ったリンゴ」と表現しているが、そのようなメンバーがひとりいるだけで他のメンバーによってそこが危険な環境になってしまうのだ。なので、チームメンバーは慎重に選ばなければならないし、チームのためにならないメンバーは改心してもらうか、出ていってもらうしかない。

成功しているチームは、チームワークが生まれるのを偶然にまかせたりはしない。メンバーに期待されていることを明確にしている。そして言葉や態度で、協力することの大切さを何度も伝える。

いいチームワークを生むためにメンバーにはメンバーの責任がある。リーダーがそれを主導する。

成功しているチームは、実行しやすいように、ごくシンプルなしくみをつくっている。たとえば、「すべてのミーティングでかならず全員が発言する」というようなルールである。

チームワークを高められるように仕組みとして当たり前化する。エピソードとして登場する多くのチームが何らかの習慣を持っている。

次に読む本

OKRについての本を読むつもり。

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法