nekogata.hatenablog.com
同僚であるしんぺいさんの記事を読んで、僕が前に書いたものを思い出した。
今ならもうちょっと違う言い方ができるような気がするし、しんぺいさんの合意の話ともちょっと繋がりそうな気がした。
lacolaco.hatenablog.com
以前僕は、合意をつくる場には2種類あって、以前はそれを「決める場」と「考える仲間」と表現した。
前者は利害が対立する者の集まりで自我同士の対立を調停するための合意をつくる場だが、後者は帰属意識のある仲間の集まりで全員が『われわれ』の立場で『われわれ』にとってのよりよい答えを求める場で、自己と場の関係が違うということを書いた。
利害が対立する者同士の場においては、関心事は常に自らにかかる利害であって、そうした状況では他の者が何をするかわからないというのは不安な状態だ。
この不安を減らすために、合意という形で他者がどのように行動し、その結果どのような利害が自らに降りかかるのかを予測できるようにする。
そういう安心のための協定が、利害関係者たちの「決める場」における合意の必然性だと考える。
一方で、仲間の場においては全員が一定の範囲で自我を共有している。そこでは共通の主語『われわれ』で話すことになる。『われわれ』はひとつの主体なので、『われわれ』が自分自身に害をなすわけがない。そうなると利害は関心にならない。関心になるのは『われわれ』の欲望をどのように満たすかということ。
個人の利己的行為がそのままその集団にとっての利とイコールであるようなあり方が、『われわれ』がつくられている状態だ。
翻って、しんぺいさんのいう「メタ合意」が作れる場というのは後者の場であって、逆にその場が利害関係者(ステークホルダー)の集まりになっている限りは「メタ合意」はつくられないのではないか。
つまり、「メタ合意」をつくるということは、その合意にまつわる関心事(=欲望)の限りで『われわれ』をつくることと同じであると言えるのではないか、と考えた。
チームなり組織なりに対して「何が『われわれ』をつないでいるのか」ということを問い直してみよう。
たとえばそれは目的かもしれないし、同族意識などなんでもありえるが、何らかの欲望が取り出せるはず。
しんぺいさんのいう「メタ合意」とは、このような『われわれ』の欲望のことであると思う。
その欲望によって、「その欲望が果たせなくなるようなことはしない」という最初の「メタ合意」が必然的に生まれるわけだから。
行動するのに合意が必要ということは、その関心事についてはまだ利害関係があり、『われわれ』の欲望ではないと捉えられる。
逆に、合意いりませんよといえる時には、その関心事について『われわれ』がつくれている、ということ。
だから合意が必要なときには、なぜそもそも利害関係が発生しているのかということを解きほぐそうとするといいだろうし、それは互いの欲望を表層から深層に向かって掘り下げていき、「ここについては同じ立場ですね」といえる欲望を掘り当てることである。
「メタ合意」をつくり相互に信頼しあえるようなチームや組織をどのようにつくるか、つまり『われわれ』をどのようにつくるかということについて。
それは「少なくともこの関心事においてこの場に利害関係はない」と言える欲望を見出すほかない。そのような欲望について考えるときだけは、『わたし』ではなく『われわれ』を主語にして語ることができる。だが、個に対して『われわれ』を押し付けるのは同調圧力になる。『われわれ』の欲望は広ければいいものではなく、その場において『われわれ』をつないでいるのは何かということを自覚し、言語化し、納得していることが重要だろう。
b.hatena.ne.jp
この考察も面白くて、僕の『われわれ』論からこれを捉えてみた。
小さい集団は、その構成員それぞれの欲望や利害が把握しやすい。そのため明文化されていなくても、どこまでが『われわれ』で語れる欲望であるか、つまり「メタ合意」を察しやすい。そのことから、リスクがあっても行動できる心理的安全性につながるといえる。『われわれ』として自分のためにやることが、『われわれ』自身の害になるわけがないのだから。
一方で、サイズが大きくなることによって複雑さが増すと、そのような察し方は難しくなる。『われわれ』の境界がひと目には見えないから明文化が必須になる。さらに、人が多くなるということはそれだけ共有できる欲望の最大公約数は小さくなる。多様な欲望者たちのあいだで『われわれ』を維持するには、強いルールとしてメタ合意が必要になるだろう。
また、金や時間、労力のコストを減らしたいという欲望は、数少ない共通の(汎用性の高い)欲望として、メタ合意の拠り所になるだろう。それが本質といえるかどうかはわからないが。
(弊社Slackの times_lacolaco より抜粋・加筆編集)