時間の交換レート
なにかに時間を費やすと、代わりに何かしらを得る。労働をすれば時間と引き換えに金銭を得られるし、遊びにいけば時間と引き換えに楽しさや思い出を得られる。何もせず休むことでも、時間と引き換えにやすらぎや健康回復などが得られる。あるいは、寂しさや虚しさを得ることもあるかもしれない。常に収支がプラスとは限らない。
寿命がある生き物にとって時間は有限であり、そのうえ、時間は使わずに貯蓄しておくことができない。だから、時間はできるだけすみやかに、できるだけ大きなものに交換したいと思うのは経済合理性を重視する人にとっては自然なことだ。その選択肢は人それぞれの機会・能力などによりさまざまあるし、その人にとっての価値判断基準によって同じ交換でもその価値は変わる。1時間働いて1500円もらう交換が高レートな人もいるし低レートの人もいる。それはその人の持っている交換可能性の選択肢の中での相対的評価でしかない。
自分の時間を最大限に利用したいと考えるなら、常に自身が持つ最高レートの交換を行い続けることになる。そこにはリスクヘッジも必要だろう。ひとつの交換手段に固執したことで別の可能性を見落とすこともあるし、交換レートが途中で変動することもあるからだ。だから、そのように考えるなら、常に自分の時間の交換レートを意識することになる。それは同時に、常に自分の価値判断基準を意識することでもある。今の自分にとって金銭・安らぎ・快楽・自己成長実感・他者とのつながり・その他諸々はどれほどの価値があるのか?時間はあらゆるものとの交換可能性がある。そのすべてを同列に並べて価値判断する「価格」を決めるのは、増やせず動かせず貯められない有限の時間という「通貨」との交換レートしかないのではないか。
タイムパフォーマンスという言葉が一般的になっているのも、多様な価値観が混じり合う社会のなかで、だれしもに共通する時間という「通貨」以外に、他者との共通了解をつくる足がかりがなくなってきているのではないかとも思う。一方で、経済合理性を重視しない生き方も当然ある。そのような他者とはどのように語らったらよいのか、何がそこで互いの価値を交換できる共通の通貨となるのか、まだわからない。
ドイツ語技能検定の4級に合格した
12月に受験していたドイツ語技能検定の4級に合格してました。やったね。ドイツ旅行に行っても帰ってこられそう。
Duolingoも260日くらい続いているので今年も勉強を続けて、今度の冬は3級を受けようと思う。
『段ボール読み』集合知山手線ゲームをふりかえる
この記事は ゆる言語学ラジオ非公式 Advent Calendar 2022 - Adventar の7日目の記事です。
アドベントカレンダーの発起人ではあるものの他の参加者みたいなコンテンツは持ち合わせてないので、ゆサD(ゆる言語学ラジオサポーターDiscordサーバー)の中で今年楽しかった集合知山手線ゲーム(あるルールに合致するワードを集めたい人が山手線ゲーム形式で集合知を募る遊び)のひとつ、『段ボール読み』スレッドについて振り返りながら、こういう遊びをサポーターコミュニティでは楽しくやってるよ、という雰囲気を紹介したい。こんな遊びが好きならあなたもぜひゆサDへ!
専門用語が多くて語釈がめんどくさいなこれ。
『段ボール読み』の誕生
ことの発端は2022年2月4日、ゆサDのゆるい雑談チャンネルでのひとこと。
訓+外来語はあれど音+外来語の例ってあんま無い気がする。探したい
なさそうな感じがしたけどみんなでも考え始めるといっぱい出てきたので、集合知山手線ゲームとして立て直すことに。 このときに「音読み+外来語」というルールの呼称が『段ボール読み』になった。「音読み+外来語」に合致する代表的な例をそのカテゴリーの呼称にするということで、いわゆるシネクドキ(ゆる言語学ラジオ好きはすぐシネクドキって言いたがる)である。重箱読み、湯桶読み、そこに連なる新たなパターンが『段ボール読み』である。天才の命名。
レギュレーションの制定
集合知山手線ゲームといえばまずレギュレーションの制定・確認をするものである(そうなんです)。今回も「音読み+外来語」だけでは曖昧だったレギュレーションを詰めるところからスタートした。
集合知山手線ゲームの難しいところは、言葉はだいたい無限に創作可能で、特に漢字の熟語はかなり自由度が高いということ。段ボール読みのレギュレーションでは音読みする漢字部分は1文字に限定し、なおかつその漢字が用言ではないことがスタートラインとなった。
レギュレーションがゲーム参加者の中で共有されて回答が集まり始めたが、どうやら段ボール読みの言葉の中でも芸術性のような観点があることがわかってきた。そこからはより芸術点の高い段ボール読みを集めるゲームへとシフトしていった。
段ボール読みの四象限
そんなこんなで楽しくなってきた僕は、段ボール読みの芸術性が大きく2つの軸で評価できると踏んで、それを可視化してみようということで段ボール読みの四象限を作った。
作ってみたもののしっくりこないため、その後も集まり続ける段ボール読みをプロットする軸を試行錯誤していた
次々に集合知が集まりながらも、最終的に「漢字部分の造語力」と「外来語部分の造語力」の2軸による四象限が出来上がった。造語力とは、別の単語とくっついて合成語を作りやすいかどうかの度合いである。「高○○」や「反○○」などは造語力の高い漢字部分の典型例である。
この四象限で左上に近づくほど芸術性の高い段ボール読みだということがひと目でわかるようになった。ここから先の僕はスレッドに流れてくる集合知をひたすらプロットしていくことで段ボール読みに向き合っていた。
こんな感じで2月4日が終わり、このゲームも流れていくかと思いきや、翌日以降も新たな参加者による新ネタでさらに充実していく。
『塩ビ管読み』という新たな可能性
そんな感じでゆるやかに段ボール読みの収集が続けられていたが、偶然登場した「塩ビ」から『塩ビ管読み』という新しいカテゴリが発見されたが、まだあまり研究は進んでいない。
もし塩ビ管読みに強く惹かれた人がいたらぜひ集合知山手線ゲームを立ち上げてみるといいと思う。
そして人々は飽きていく
次から次に新しい集合知山手線ゲームは生まれているので、段ボール読みもだんだんと忘れられてスレッドはアーカイブされていく。1ヶ月近く収集が続いたので、集合知山手線ゲームの中ではだいぶ長いこと続いた方だと思う。 最終的に段ボール読みの体系はこんな感じになった。
案外探せば見つかるが、いいのが見つかったと思ったら訓読みだった〜ということも多く、そのバランスがいい具合に面白かったテーマだと思う。難しすぎると考えるのをやめちゃうし、簡単すぎると面白くない。「おお〜〜」という芸術性の高い段ボール読みを出せたときの快感がクセになる。
そして一度この遊びを知ってしまうと日常的にあらゆる場面で段ボール読みを探してしまうし、見つけたときに「段ボール読みだ」と思ってしまう呪いにかかる。この中毒性は ゴママヨサラダ に通じるものがある。ゆサDにはゴママヨを集める「ゴママヨサラダ」スレッドもあるのでゴママヨの呪いにかかった諸氏はぜひ参加してほしい。
以上、個人的に今年一番ハマったゆる言語学ラジオサポーターコミュニティでの遊びを思い出してふりかえってみました。サポーターコミュニティ開設初日から参加してますが1年過ぎてもいまだに盛り上がりつづけており、最近はあまり顔を出せてないですがいつ覗いてもにぎやかなのでいつでも帰ってこれそうだと思える不思議なコミュニティです。来年も楽しませてもらおうと思います。
ついでですが、ゆサDがきっかけで始めたドイツ語の勉強の成果としてドイツ語検定の4級を受けてきました。自己採点では多分合格できてると思います。何かを新しく学びたいと思わされる刺激的な人たちがいっぱいです。
明日はyasuさんの投稿です。
ビジネスとエンジニアリングの3wayハンドシェイク
ビジネスとエンジニアリングが足並みをそろえて共に顧客に価値を届けるためには、欠かすことのできないステップがあることに気づいた。それは 「要求」「検査」「合意」 の3ステップで、あらためて考えると当たり前のことしか言ってないが、これを欠いたプロジェクトは簡単に炎上する。この3ステップの様子がTCPのコネクション確立時のプロトコルと似ていたので、ビジネスとエンジニアリングの3wayハンドシェイク と呼ぶことにした。
1.「要求」: ビジネス要求をすべてテーブルに載せる
最初のステップは、ビジネスがプロダクトへの要求をすべてテーブルに載せる。 「テーブルに載せる」 というのは、人々が囲む円卓の上に情報や考えを公開し、それぞれの人が吟味して議論できるようにするイメージだ。ここではプロダクトというテーブルをビジネスとエンジニアリングが囲んでいるということになる。
「要求」に求められるのは、忖度も遠慮もなく、100%の理想をまずテーブルに載せること。2番目の「検査」では、最初にテーブルに載せられたものしか扱えない。ここで隠した目論見や期待が後出しされ、すでに動き出したプロジェクトが吸収できる衝撃の許容限界を超えてしまえば、プロジェクトは炎上する。
とはいえ最初からすべての要求を具体的にすることは難しい。それでもわかってないことはわかっていないということを全部載せる。何がわかってることで何がわかっていないことかという認識を、テーブルを囲む全員で共有する。わかってないからといって隠さずに「このへんは後から変わる可能性が高いから変わっても耐えられるようにしてくれ」という要求ができないと、「そんなことは聞いてない」という悲しい炎上が待っている。
2. 「検査」: ビジネス要求の実現可能性を見積もる
次のステップは、テーブルに載せられたビジネスからプロダクトへの要求を、エンジニアリングの視点で開発要件に翻訳した上で実現可能性を見積もる。検査の最初の段階では、100%の理想を実現するために必要な仕事を見積もり、チームや組織にその仕事を実行できる力があるかどうかを吟味する。
力が足りないのなら、この要求すべてを満たすことは難しいということとその根拠をテーブルに上乗せする。もし余裕があるのなら、余力があること、もっと顧客に価値を届けるために厳しい要求に答えられることも上乗せする。ここで余力があることを隠すと、それに感づかれてしまった後には信頼を失い、「どうせ余力があるんだから後から追加の要求をしても大丈夫だろう」と「要求」の質が下がることになる。
3.「合意」: 実現可能かつ価値ある明確なプロジェクトのゴールに合意する
エンジニアリングサイドから最初の「検査」結果が出たら、あとはテーブルを囲む人々で協力してビジネス要求を調整する余地を探る。実現可能性があり、顧客にもっとも大きな価値を届けられる落とし所を探る。
全員が納得の行く「合意」に至るには、それぞれの判断基準がすべてテーブルに載っていて、テーブル上の材料から考えれば誰もが同じ結論に辿り着くだろうという信頼が必要である。
実現可能性と顧客価値の両方が最大化される点を見つけ、その実現に明確なコミットメントを置かなければ、プロジェクトは炎上する。厳しすぎるゴールはそもそも実現できないし、参加メンバーも消耗する。甘すぎるゴールもコミットメントがあいまいになり、計画性や生産性を高めるための創意工夫がおろそかになる。そしてプロジェクトの期間が長くなれば長くなるほど後からビジネス要求が追加される可能性も高まる。(パーキンソンの法則)
ビジネスにとっても顧客にとってもエンジニアリングにとっても、甘すぎるゴールは望ましくない。実現可能性と顧客価値の両方が最大化される絶妙なラインを見定めるのが、ビジネスとエンジニアリングでテーブルを囲んでやらなければならないことである。
3way ハンドシェイク
3way ハンドシェイクとは一般的に、TCPにおいてクライアントとサーバーの間の通信を確立するための所定の手続きのことで、次の3ステップを最初に行う。
- クライアント -> サーバー:
SYN
を送信 - サーバー -> クライアント:
SYN-ACK
を送信 - クライアント -> サーバー:
ACK
を送信
「要求」「検査」「合意」 は同じ3ステップのプロトコルということだけでなく、クライアントとサーバーが接続して機能するためにかならず最初に行わなければならない手続きという点で似ている。ビジネスとエンジニアリングの協働をはじめるためのプロトコルとして、3wayハンドシェイクという比喩はそこそこ的を射ているのではないかと思う。
また、これはあくまでも信頼できるコネクションを確立するまでのプロトコルにすぎず、確立したコネクション上でどのようにコミュニケーションしてデリバリーにつなげるかはチームのプロトコル次第だというのも、TCPとHTTPの関係に似ているようにも思う。
3way ハンドシェイクができないチーム
そのチームが自分たちで3way ハンドシェイクができなければ、できる人に「要件定義」をしてもらわないといけない。つまり上流工程と下流工程の分離であり、バリューストリームの源泉をチームの外に依存した状態だということになる。
自分たちで一貫して顧客に価値を届けたければ、チームが自分たちで3wayハンドシェイクができるようにならないといけないし、それが自律したプロダクトチームが担うプロダクトマネジメントの最初の一歩ではないか。
社内ブログに書いた内容から加筆修正して公開。
独検2022冬の4級に出願した
ゆる言語学ラジオのサポーターコミュニティDiscordがきっかけで始めたDuolingoでのドイツ語学習が180日くらい続いており、せっかくなので何かしら試験を受けてみようと思って独検ことドイツ語技能検定試験に出願してみた。
試験日は12/4。 Duolingo基準だとこれまでに1500単語くらいに触れているらしいが、ReadingはともかくWritingはぜんぜんやってないので、あまり冒険せず1000語相当らしい4級からはじめてみることにした。
文法規則はけっこうわかってきているのであとは語彙と場数という感じな気がしている。というわけで試験までの戦略は
- 過去問を解く
- 単語学習用のアプリで毎日語彙を増やす
単語学習用のアプリはなんとなくよさそうな ReWordというのを使ってみる。Duolingoと同じく英語話者向けの教材だが多分これで困らない。
というわけでしばらく合格に向けて勉強していきます。