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読後メモ「THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法」

いつもの読後メモです。

今回読んだのはダニエル・コイル著の「THE CULTURE CODE」の日本語訳版。

THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法

THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法

この本は「チームの文化」というそこにあるのは確かなのに実体がつかめないダークマターのようなものに焦点を当てる。

実在の成功しているチーム、失敗しているチームへのインタビューや調査、そして多くの心理学的、社会学的実験のデータから、成功するチームのつくり方を明らかにしていく。全体を通して非常にエビデンス重視になっている。

感想

ここ最近で読んだ本の中で一番面白かった。

これからチームを作る人、チームを任された人、あるいは自分のチームが十分に成功していないと感じる人には、この本をぜひ読んでもらいたい。 チームを成功させるためにやるべきこと、やってはいけないこと、その基本がこの本には多くのエピソードやエビデンスと共に語られている。 エピソードが多いため登場する人名も多いが、全体を通して読みやすく翻訳されている。

よくGoogleNetflixのような一流企業のチームは素晴らしい文化を持っていると語られる。 この本を読むと、そうした文化は先天性のDNAのようなものではなく、スキルによって勝ち取り、育み、支えられているものだとわかる。 それは優れたリーダーが扇動するだけで出来上がるものでもない。日々の積み重ねで価値観を醸成していかなければならない。

この本では「心理的安全性」という言葉は使われないが、この本の中で「成功しているチーム」として挙げられるチームは例外なく心理的安全性が高い。 心理的安全性を高める方法に悩んでいる人にとっても、良いガイドになるだろう。

成功するチームには文化がある。その文化を作るスキルの磨き方を教えてくれる本だった。

印象深かったフレーズ

強いチームの文化を醸成するためのカギは、高度なスキルを持つ優秀なメンバーを集めることにはない。迅速な意思決定と実行でもない。そもそも「強いリーダー」は必要ない。個性的でエキセントリックな天才も必要ない。野心的で挑戦的なビジョンは不要。最先端のテクノロジーも無用。決め手は日常の仕事での、ちょっとしたさりげない行動──それはしばしば当人も意識していない──にある。小さな行動の積み重ねが大きな違いを生み出す。  強いチームのエンジンに火をつけるのはいたって常識的な「普通の人」である。

多くのエピソードが紹介されるが、キーマンとなるのは特別な才能を持ったリーダーではなく、人当たりのよい常識人であることが多い。そういう人柄こそがチームをうまく機能させる。

チームの文化が大切だということは誰でも知っている。しかし、そのしくみとなると、きちんと理解している人はほとんどいない。... しくみがよくわからないのは、もしかしたら「文化」というものを誤解しているからかもしれない。私たちは、文化はDNAのようなものだと考えている。  強固なチームの文化というと、たとえばグーグルやディズニー、ネイビーシールズなどが思い浮かぶだろう。彼らには固有の文化がある。あまりに独自の文化なので、彼らにしかないDNAから生まれたとしか思えない。  つまり、文化は運命のようなものであり、努力でどうにかなるものではない。強固な文化を持つチームもあれば、持たないチームもある。運命とはそういうものだ。  しかし、この本はその考え方に賛同しない。私はこの4年の間に、世界でもっとも成功している8つのチームを実際に訪ね、分析を重ねてきた。たとえば、軍の特殊部隊、都市部の貧困地区にある公立学校、プロのバスケットボールチーム、映画スタジオ、コメディ集団、宝石窃盗団などだ※2。  分析の結果、それらのチームには共通のスキルがあることがわかった。

文化とはスキルによって作られるものである。というこの本の主題。

たいていの人は、「言葉は言葉でしかない」とは考えない。むしろ大切なのは言葉であり、チームのパフォーマンスはメンバーの「言葉の知性」と比例し、複雑なアイデアを的確に伝える能力が高いほど、チームのパフォーマンスも上がると考えている。  しかし、その考え方は間違っている。言葉はノイズだ。  チームのパフォーマンスを決めるのは、「ここは安全な場所だ。そして私たちはつながっている」というメッセージを伝えるしぐさや態度なのだ。

多くの場合、人を動かすのは言葉ではなく仲間の振る舞いだ。という集団的知性の話。

人間の脳が「安心」を合理的に理解するのであれば、シグナルは一度で十分なはずだ。しかし私たちの脳はそのように進化していない。脳のいちばんの仕事はむしろ心配することであり、とりつかれたように「危険」のシグナルを探している。だからこそ人類は生き残ることができた。  この危険を執拗に恐れる態度は、脳の奥深くにある扁桃体という部位から生まれている。扁桃体は原始的な脳の部位で、つねに周りの環境を監視して危険を探している。

繰り返し帰属のシグナルを送り続けなければならない理由について。「ここにいても安全か」という心配は本能であり、どこかに危険なサインがないかをいつも探している。

帰属のシグナルに、人格や規律は関係ない。大切なのは、メンバーが安心できる環境をつくることだ。 「私たちはつながっているか?」 「私たちは未来を共有しているか?」 「ここは安全な場所か?」  という問いに対して、「イエス」という答えを与えられる環境がカギになる。

「メンバーが安心できる環境」とはつまり心理的安全性の高いチームであるということだ。その環境をどう作るかという話が細かく書かれている。

いいチームをつくるうえでいちばん大切なのは、優秀なメンバーを集めることでも、経験豊かなメンバーを集めることでもない。それは、メンバーの机の位置だ。 「目で見えるといったごく単純なことが、とても大きな意味を持つ」とアレンは言う。「他のメンバーの姿が見える、他のメンバーが働いている場所が見えるといったことが、彼らの存在を思い出させるきっかけになってくれる。それが大きな力を持つようになる。

すべては 「私たちはつながっているか?」 「私たちは未来を共有しているか?」 「ここは安全な場所か?」 を確認できるということに通じる。

成功しているチームは、メンバー選びの段階からすでに成功している。 ... 成功しているチームは、腐ったリンゴに対してとても厳しい。それに加えて、腐ったリンゴを鋭く見抜くこともできる。おそらく後者のほうが、より重要な資質だろう。 「オールブラックス」の愛称で知られるラグビーニュージーランド代表チームは、世界史上もっとも成功したスポーツチームの1つに数えられる。そんな彼らのモットーは、「愚か者は去れ」だ。シンプルな言葉だが、だからこそ大きな効果がある。

この本を読むとわかるが、チームに悪影響を与えるメンバーというのは明確に存在する。非協力的なメンバーを「腐ったリンゴ」と表現しているが、そのようなメンバーがひとりいるだけで他のメンバーによってそこが危険な環境になってしまうのだ。なので、チームメンバーは慎重に選ばなければならないし、チームのためにならないメンバーは改心してもらうか、出ていってもらうしかない。

成功しているチームは、チームワークが生まれるのを偶然にまかせたりはしない。メンバーに期待されていることを明確にしている。そして言葉や態度で、協力することの大切さを何度も伝える。

いいチームワークを生むためにメンバーにはメンバーの責任がある。リーダーがそれを主導する。

成功しているチームは、実行しやすいように、ごくシンプルなしくみをつくっている。たとえば、「すべてのミーティングでかならず全員が発言する」というようなルールである。

チームワークを高められるように仕組みとして当たり前化する。エピソードとして登場する多くのチームが何らかの習慣を持っている。

次に読む本

OKRについての本を読むつもり。

OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

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