余白

https://blog.lacolaco.net/ に移転しました

スピノザ『エチカ』とライフハック本

スピノザ『エチカ』を読んだ。『エチカ』を読み終わったあとに、参考書として上野修スピノザの世界』もあわせて読んだ。

www.iwanami.co.jp

bookclub.kodansha.co.jp

表現は確かに異質なものではあったが、その中身は不思議とすんなり入ってきた。

そのタイトルの通り、『エチカ』は倫理についての哲学であり、「善く生きるとはどのような生き方か?」という問いに答えた本だと思った。 結論をざっくりまとめてしまえば、第5部に書かれているように、自分の感情を理解すれば感情に振り回されること少なく幸福に生きられる、それが理性的に生きる賢者の道だということだ。

だが、こんな風にまとめてしまえばまるで自己啓発本のようだ。これではあまりにも安っぽい受け取り方なのではないか? そこで思い出したのが、先日読んだ千葉雅也氏のインタビュー記事。

哲学者・千葉雅也が語る、「哲学・思想」と「自己啓発・ライフハック」の意外な関係(千葉 雅也) | 現代ビジネス | 講談社(4/5)

多かれ少なかれ、人間をテーマにした哲学は人の生の本質を問うのだから、自己啓発ライフハック的側面を持つのは当然だろう。 哲学とは論理の学である。哲学書として読むのなら、結論が導かれるまでの抜け目ない論理の組み立てを追いかけ、疑い、たしかめることが必要だ。 だが、『エチカ』をライフハックとして<役立てる>ことができるのもまた事実だろう。その観点では『エチカ』は哲学書だろうが思想書だろうが自己啓発本だろうが、役に立つならジャンルはなんだっていいのだ。結局は、その本とどのように向き合うかというこちら側の姿勢だ。

17世紀ヨーロッパを代表する哲学書のひとつでもあり、2022年になってもまだ使える自己啓発本でもある。 『エチカ』はそういう本だといっても怒られはしないだろう。